2006 FORD MUSTANG RONAELE 700R
2013/11/14
ECU現車セッティング(SCT X3使用)・PROCHARGER Supercharger Kit
未計測
最大出力532.2ps/5878rpm 最大トルク64.8kg・m/5839rpm
今回はRONAELE 700Rというマスタングのコンプリートカーを現車セッティングでお預かりしました。
入庫した時は、エンジン始動時にプラグが一回かぶってしまうとかからなくなってしまうという状態でした。
アメリカではこのパッケージで売られているようなのですが、なぜこのような状態で売ってしまうのか?と疑問に思ってしまいます。
色々調べたところ、通常このスーパーチャージャーキットはDIABLOSPORTのデバイスが付属しているはずですがそのデバイスを無くしてしまったとのことで、今回はSCTのX3を使用して初期状態(NAノーマルデータ)からセッティングを始めました。
補足ですが、このスーパーチャージャーキットは日本で15年ほど前によく行われていた、エアフロを押し込み式にして使っています。
キットそのままであれば、DIABLOSPORTのエアフロインターフェースアダプターが付属しているので、それに合うようにDIABLOSPORTのソフトで設定してあげればいいのですが、今回はSCTでセッティングをしたのでエアフロアダプターを使用出来なく、センサーからの出力電圧はそのままで全域で吸入空気量がきちんと測定できるようにエアフロマップをかなり細かく調整しました。
インジェクターの設定もそうですが、このエアフロマップの設定も押し込み式になっていることによりかなり難しいのですが、なんとかクリア出来ました。
ここで注意ですが、通常は一度SCTやDIABLOSPORTのデバイスでチューンデータをインストールすると、そのデバイスでノーマルデータに戻さない限り、他のデバイスでデータをインストールすることは出来ません。
今回は特別な方法でSCTのX3を使用出来るようにしました。
セッティング作業の詳細ですが、インジェクターが変更されていてそのものに合うデータがSCTの初期データにもなかったので、燃料系の設定を一から行なったためとても時間がかかりました。
持ち込まれた状態でパワーチェックすることは出来ませんでしたが、結果的にはいい状態になったと思います。
ただ、700Rの名前が示すとおり700psのコンプリートカーとのことでしたが、どう考えてもそこまでパワーが出るようなブーストになるプーリーの組み合わせにもなっていませんでした。
また、セッティングを進めていくうちに、ロギングデータで高回転時に燃圧が落ち込んでA/Fが薄くなっていく傾向が見受けられました。
リターンレスフューエルシステムなので、燃料ポンプの駆動電圧もECUで制御しているのですが、この電圧を上げてもその傾向は変わらず、燃料噴射量を増やしても変化が見られなかったので、高回転時にはECUプログラムで意図的にスロットルの開度を抑えることによってエンジンが壊れないようにセッティングしています。
この車両は通常のキットよりも大きなスーパーチャージャーに変更されていたため、低回転から急激にトルクが立ち上がるというような感じもなく、回転に同期してパワーとトルクが徐々に上がっていきます。
NAのような感じと言えばいいのでしょうか?もちろんスーパーチャージャーなのでNAとは比べ物になりませんし、サイズが大きめの遠心式のためか高回転でパワー・トルク共に落ち込むこともなくどこまでも伸びていきます。
最後に時間を掛けた部分が、クランキング時と冷機時のセッティングです。
今回のようにデータがないインジェクターでセッティングする時は、クランキング時にかぶったりしないようにすることや、完全な冷機時から問題なくアイドリングさせることがとても難しく、クランキング時の燃料噴射量・スロットル開度・予想吸入空気量の設定、冷機時用の燃料マップ等、その他色々関連するとても多くのマップを変更して問題ない状態を導き出します。
しかも完全な冷機時という状態は、一度エンジンが暖まってしまうと冷えるまでも時間がかかるので一日のうちに何回もその時の状態を確認出来ません。
なるべく早く完全に冷えるように、ファンで冷やし数時間待ってという事を何度も繰り返し、セッティングをしていきいい状態に持っていく事が出来ました。