FORD Shelby GT500 リセッティング
2013/10/17
※今回変更点のみ記載:アンダーサイズスーパーチャージャープーリー・ATI Super Damper・TURBOSMART Race Port BOV(スーパーチャージャーリリーフバルブとして使用)・HKS EVC(リリーフバルブ制御用)・ドラガス100%使用・NOS未使用・ECUリセッティング
最大出力548.8ps/5131rpm 最大トルク84.1kg・m/3947rpm
最大出力957.2ps/7121rpm 最大トルク112.0kg・m/4977rpm
デモカーのShelby GT500をドリフト向けからドラッグレース向けへの仕様変更として、まずはモアパワーを目指しハイブースト化を実施しました。
変更点はセットアップ内容にも記載していますが、主に各プーリー変更によるブーストアップと上がったブーストをきちんと制御するためのリリーフバルブの取付です。ATI Super Damperはプーリー径もですが、高回転まで回した時に少しでもエンジントラブルが出ないようにという意味も含め採用しました。
今回のセッティング後のパワーチェックではパワーが出すぎているためか駆動系ロスがうまく計測出来なかったため、ホイールパワーでの表記になっていますのでセットアップ前の表記もホイールパワーに変更しました。
シャシダイで出力される数値についての説明ですが、通常はパワーチェックで目標回転までまわしたあとにクラッチを切るかニュートラル状態にしてパワーチェックを開始した回転数まで自然にローラーが減速するのを待ちます。
この時に駆動系やタイヤのグリップによる損失を計測して、実際にタイヤがローラーを回した力に加算されます。
この加算された後の数値がエンジンパワーと呼ばれ、通常のパワーチェックの数値となります。
ホイールパワーとは、この損失分を加算しないのでタイヤがローラーを回した力のみの数値なのでエンジンパワーよりも低い数値となります。
ですので、今回のセットアップ前のパワーやトルクの数値が前回掲載している数値とは異なっています。
本題のセッティング内容についてですが、今までは特にブーストコントローラーを使用せずにプーリーの比率とNOS噴射でブースト0.9k程度となっていました。
今回はプーリー比率のみでのブースト設定ではなく、プーリーは設定されている中で一番ブーストが上がる組み合わせにして、上がりすぎるブーストはリリーフさせるように変更しました。
スーパーチャージャーはエンジン回転に同期してブーストがあがるので、プーリーを小さくすることによって低回転からのブーストの立ち上がりも早くなる効果があります。
グラフを見ていただくとわかりますが、3500rpmからすでに今までのパワーを上回りそこからは全く比較にならないほどの結果になりました。
実際には低回転からスロットルを全開にしてしまうと、タイヤが滑ってしまい4000rpmくらいからしか全開に出来なかったので、このようなグラフになっています。
セッティングではもちろん徐々にブーストを上げていったのですが、最終的には1.5kでセットしました。
いままでは市販ハイオクとドラガスを50:50で使用していて、今回からドラガス100%にしたことで点火時期も進角出来たのでその効果も大きかったかもしれません。
ここまでのパワーが出てしまったので、今回NOSは噴射しませんでした。
アメリカでShelby GT500のノーマルエンジンはホイールパワーで600psまでしかもたないと言われていて、その1.7倍近くのパワーが出てしまっているので、NOSを噴射する必要がなくなってしまったというのが本当のところです。
全開時間が長ければもしかしたらコンロッドが折損する等のトラブルが出るかもしれませんが、この仕様変更を実施してからドラッグレースに2回参戦しても特にトラブルも出ていません。
ただしこれだけのパワーやトルクが出て幅広のドラッグ用のタイヤを履かせても、約2tの車重とドリフト用にセットアップした足回りではすぐにいい結果が出るというわけでもなく、そこもドラッグレースの楽しみの部分でもあります。
ちなみに仙台ハイランドにて行われたJDDA最終戦では、区間タイム10秒9が出ました。
この車重や足回りの現状を考えると、まずまずの結果だったのではと思います。
この車両の当初からのコンセプトとして、ノーマルエンジンのポテンシャルを限界まで引き出すというのがあったので、今回のリセッティングでそのコンセプトも達成出来たかと思います。
もちろんこれだけのパワーやトルクを出すにあたっては、精密で適正な現車セッティングが必要なことは言うまでもないと思います。